飛行機のハイドロプレーニング現象とは?種類・原因・対策をわかりやすく解説

航空

こんにちは、10月は台風が来たりと雨が多いなと感じたので、雨から生じる離着陸時に起きるパイロットが気をつけるべき現象を解説していきたいと思います。

はじめに

飛行機の着陸時、雨で濡れた滑走路を高速で走行すると、タイヤが水の上を滑るようにして制動が効かなくなる現象があります。
これが「ハイドロプレーニング(Hydroplaning)」、または「アクアプレーニング(Aquaplaning)」と呼ばれる現象です。

自動車でも見られる現象ですが、航空機の場合は速度・重量・滑走距離が大きいため、制御を誤ると滑走路逸脱などの重大インシデントにつながる可能性があります。
この記事では、航空専門用語をかみ砕いて、ハイドロプレーニングの種類・原因・発生条件・対策を詳しく解説します。

ハイドロプレーニング現象とは

ハイドロプレーニングとは、タイヤのトレッド(溝)が滑走路表面の水を十分に排除できず、タイヤが水膜に乗り上げて接地を失う状態を指します。
結果として、タイヤと路面の摩擦力が著しく低下し、ブレーキや方向舵が効かなくなるのです。

飛行機は離着陸時に時速200kmを超える速度で滑走するため、わずか数ミリの水膜でも深刻な影響を与えることがあります。
パイロットがブレーキをかけても「制動距離が伸びる」「機体が横滑りする」といった事態が起こり得ます。

ハイドロプレーニングの種類

ハイドロプレーニングには主に3つのタイプがあります。
それぞれ発生原因や状況が異なります。

1. ダイナミック・ハイドロプレーニング

最も一般的なタイプで、水深が約3mm以上ある滑走路で高速走行中に発生します。タイヤが水を押しのけきれず、水圧が接地面を浮かせることで、グリップを完全に失います。

発生速度 ≒ 9 × √タイヤ空気圧(psi)

2. ビスカス・ハイドロプレーニング

水深が浅くても発生するタイプです。
滑走路表面に薄い水膜や油膜、ゴム残留物が存在することで、路面との粘性摩擦が低下し、滑りやすくなります。

特に、滑走路舗装が古くツルツルしている場合や、雨が小降りで路面が“うっすら濡れている”状態でも発生することがあります。

見た目に分かりにくく、パイロットにとっても厄介なタイプです。

3. リバージョン・ハイドロプレーニング

タイヤがロックして滑走している間に、摩擦熱によってタイヤゴムが蒸気化することで発生します。
タイヤと滑走路の間に高温の蒸気が溜まり、クッションのように浮かせてしまうのです。

この現象が起こると、滑走路に「焦げたようなゴム跡」が残ります。
ブレーキを過度にかけた場合などに起こりやすく、特に雨天時の緊急着陸などで注意が必要です。

発生しやすい条件

  • 雨天や融雪後など滑走路表面が濡れている
  • 滑走路の水深が3mm以上
  • 滑走路の排水性が悪い(古い舗装や横断勾配が低い)
  • タイヤの溝が摩耗している
  • 高速で接地(高速着陸)している

ハイドロプレーニングによる影響

航空機がハイドロプレーニングを起こすと、次のような問題が発生します。

  • ブレーキが効かず制動距離が伸びる
  • 滑走路逸脱の危険性
  • ランディングギアやブレーキシステムの損傷
  • 滑走中の方向安定性の喪失

パイロットや航空会社による対策

滑走路管理側の対策

特に、溝を入れた「グルーブド・ランウェイ(Grooved Runway)」は水はけが良く、ダイナミック・ハイドロプレーニングを大幅に低減します。

パイロット側の対策

  • 雨天時の速度抑制とファームな接地
  • 滑走路状態報告(Braking Action)の確認
  • タイヤ空気圧・溝の整備状況チェック
  • タッチダウン後は早めにスラストリバーサー(逆推力)を活用

まとめ

ハイドロプレーニングは「水によってタイヤが浮き、摩擦を失う現象」です。発生要因を理解し、滑走路整備やパイロットの技量、整備の徹底によってリスクを最小化できます。
飛行機は毎回、異なる気象・滑走路条件の中で運航されています。
パイロットの判断、滑走路整備、航空管制の連携によって、ハイドロプレーニングのリスクは大きく低減できます。

種類主な原因特徴
ダイナミック高速・深い水膜最も一般的。速度依存。
ビスカス薄い水膜・滑らかな舗装低速でも発生し得る。
リバージョンタイヤロック・蒸気化タイヤに焦げ跡が残る。

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