冬季の航空機運航において、**雪や着氷(アイシング)**は最も注意すべきリスクの一つです。ニュースで「降雪の影響により欠航」「着氷のため出発遅延」といった言葉を目にしたことがある方も多いでしょう。しかし、なぜ雪や氷がそれほど危険なのか、その理由を詳しく知る機会はあまりありません。
この記事では、雪や着氷が飛行機の運航にどのような影響を与えるのか、そしてどのような危険性をはらんでいるのかを、航空の基礎知識とともにわかりやすく解説します。航空ファンの方はもちろん、空港利用者にも役立つ内容です。
雪や着氷(アイシング)とは何か
航空分野でいう「着氷(アイシング)」とは、機体表面に水分が凍結し、氷として付着する現象を指します。必ずしも気温が氷点下である必要はなく、
- 氷点下近くの雲の中
- 過冷却水滴が存在する空域
を飛行することで発生します。雪も同様に、翼や胴体、エンジン周辺に付着することで大きな影響を与えます。
特に問題となるのは、翼・水平尾翼・エンジン吸入口・センサー類への着氷です。これらは飛行の安定性や操縦に直結する重要な部分だからです。
雪や着氷が飛行機に与える主な影響
揚力の低下
飛行機は、翼の上下面を流れる空気の流れによって揚力を得ています。しかし、翼表面に雪や氷が付着すると、
- 翼の形状が変わる
- 空気の流れが乱れる
といった現象が起こり、揚力が大きく低下します。わずかな着氷でも、離陸や上昇性能に深刻な影響を及ぼすことが知られています。
抵抗の増加と性能悪化
機体に雪や氷が付くと空気抵抗が増加し、
- 離陸滑走距離が伸びる
- 燃料消費が増える
- 上昇率が低下する
などの性能低下が起こります。特に滑走路に積雪がある場合、制動性能も低下し、離着陸時のリスクが高まります。
エンジンや計器への影響
着氷はエンジン吸入口に発生することもあり、
- 空気流量の低下
- エンジン出力の低下
- 最悪の場合エンジン停止
といった重大なトラブルにつながります。また、速度計や高度計に使用されるピトー管の着氷は、誤った計器表示を引き起こし、操縦判断を誤らせる危険性があります。
実際に起きた事故・インシデント
過去には、着氷が原因とされる航空事故・重大インシデントが世界各地で発生しています。多くの場合、
- 地上での除氷不足
- 飛行中の予想以上の着氷
- 着氷の影響を過小評価
といった要因が重なっています。これらの教訓から、現在の航空業界では着氷対策が極めて厳格に運用されています。
雪や着氷への対策|航空業界の安全対策
地上での除氷・防氷作業
降雪時や低温環境では、出発前に**除氷・防氷作業(デアイシング/アンチアイシング)**が行われます。専用の液体を機体に噴霧し、
- 付着した雪や氷を除去
- 再凍結を防止
することで安全な離陸を確保します。
機体に備えられた着氷防止装置
多くの旅客機には、
- 翼前縁の加熱装置
- エンジン吸入口の防氷機構
- センサー類の加熱
など、着氷を防ぐシステムが搭載されています。これにより、飛行中に着氷が発生しても、一定レベルまで対応可能です。
運航判断と気象情報の活用
パイロットや運航管理者は、気象レーダーや予報情報を基に、
- 着氷の可能性が高い空域を避ける
- 高度やルートを変更する
- 必要に応じて欠航や引き返しを判断する
といった運航判断を行います。「安全のための遅延や欠航」は、リスクを未然に防ぐ重要な判断なのです。
まとめ|雪や着氷は航空安全に直結する重要要素
雪や着氷は、飛行機の揚力低下や性能悪化、エンジントラブルなどを引き起こす、航空運航における重大なリスク要因です。そのため航空業界では、厳格な基準と多重の安全対策によって、これらのリスクを最小限に抑えています。
冬季に発生する遅延や欠航の背景には、こうした安全確保のための判断があります。飛行機を利用する際には、ぜひその理由を思い出してみてください。


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