はじめに
2025年6月12日、**Air India Flight 171(AI171便)**がインド・アーメダバードを離陸したわずか32秒後に墜落しました。搭乗者242名(乗客230名・乗員12名)のうち241名が死亡し、地上でも19名が亡くなりました。生存者は1名。目的地はロンドン・ガトウィック空港でした。
この事故は、最新鋭機ボーイング 787-8 ドリームライナーの重大事故であり、燃料供給制御スイッチ(fuel control switches)の動きが事故の鍵を握るものとして、調査関係者・メディアの注目を集めています。
事故の概要
項目 | 内容 |
---|---|
機種 | Boeing 787-8 Dreamliner(登録記号 VT-ANB) |
離陸空港 | アーメダバード空港(Sardar Vallabhbhai Patel International Airport) |
出発日時 | 2025年6月12日 13:39 IST(インド時間) |
飛行時間 | 離陸後約30秒~32秒後に墜落 |
被害 | 機内 241名死亡、地上 19名死亡、その他負傷者多数 |
暫定報告で明らかになったこと
調査機関(India’s Aircraft Accident Investigation Bureau, AAIB)から出された暫定報告によれば、以下の点が判明しています:
- 燃料スイッチの位置変化
離陸直後、両エンジンの燃料制御スイッチ(fuel control switches)が “RUN” から “CUTOFF” に切り替わりました。これが動力の喪失につながったとされています。 - スイッチの復帰
スイッチはその4秒後、“RUN” に戻ったことも記録されています。 - パイロット同士の会話
コックピットボイスレコーダーには、一方の操縦士が「なぜ切ったのか(why did he cut off?)」と質問し、もう一人の操縦士が「切っていない(I did not)」と答える場面が残っています。ただし、どちらがどちらかは特定されていません。 - その他の要素
- 雨・悪天候等の気象条件は事故の主原因とはされていない。
- 飛行データ記録および監視カメラ映像などが一致しており、飛行特性・速度・角度などに異常が見られたとの報告。
- 燃料スイッチには誤操作を防ぐロック機構(stop-lock mechanism)が付いており、意図せず接触して操作されることを防ぐ設計になっている。
-操縦士の疲労もなかったとされている。
・原因の考察・残る課題・未解明事項
暫定報告では明らかになっていない、あるいは調査が継続中の点も多くあります。
- スイッチがなぜ動いたのか
意図的な操作か、誤操作か、あるいは機械的な異常や設計の問題か、この点は確定していません。しかし現時点で同型式の同様の不具合は報告されていません。 - 時間的猶予と事故回避の可能性
スイッチが戻された後、エンジン再始動の試みもあったものの、低高度であったため墜落までの時間が短く、復旧が間に合わなかったとされています。 - 安全設計・規制の遵守状況
FAA(米国航空当局)が2018年に、似たタイプの燃料スイッチに関する注意喚起(Special Airworthiness Information Bulletin)を出していたが、それは義務的なものではなかったこと、また、その指摘に沿った定期点検等がすべての機体でなされていたわけではない可能性があるという情報があります。
以上を鑑みての最も可能性が高そうな事故原因はやはりヒューマンエラーです。
インドの情勢も考慮するといろいろな可能性が浮かんできて恐ろしいですが、やはりパイロットに対する精神的なスクリーニングはもっと大事になり、会社側もその管理に対して厳しく考えて行くべきでしょう。
教訓と改善の方向性
この事故から得られる教訓、および安全性を高めるために考えられている改善点を以下に整理します:
- ヒューマンファクターの重視
離陸直後という非常に忙しい段階で起きた出来事なので、パイロットの操作ミスを防ぐ設計・手順・訓練の強化が不可欠です。 - 安全設計の見直し
燃料制御スイッチのロック機構、触れやすさ、誤操作防止のための物理的なガードや位置など、より厳密な安全性評価が求められます。 - 規制の強化と透明性の確保
注意喚起レベルの規制ではなく、義務化したチェックやメンテナンスが制度として機能するよう、監査や報告制度の見直しが必要です。 - 調査の公正性と包括性
遺族・航空業界・一般市民に対する情報の共有、調査結果の発表の透明性、第三者あるいは国際的な専門家の関与など、信頼を維持するための体制整備が重要です。
結びに
Air India Flight 171の事故は、最新鋭機を用いた現代航空の中でも、操作設計・ヒューマンファクター・規制体制がいかに安全性と密接に繋がっているかを思い知らされる悲劇でした。失われた命に対する哀悼を捧げるとともに、これらの教訓が航空安全の改善へと確実につながってほしいと願います。
コメント