【パイロット目線】HF通信とは?使い方・特徴・注意点を徹底解説

航空

はじめに

現代の航空機は衛星通信やデータリンク(CPDLC)が普及し、コミュニケーション手段は多様化しています。しかし、それでも HF(High Frequency:短波)通信 は国際線の運航において欠かせない存在です。

機内の座席ではほとんど意識されない技術ですが、パイロットからすると「使いこなせるかどうか」で運航の安定度が変わる要素でもあります。

この記事では、パイロット目線で HF通信の特徴・使い方・実運用での注意点 をまとめます。


HF通信とは

HF通信は 3〜30MHzの短波帯を使用する無線通信 で、
「電離層に反射して地球の裏側まで届く」
という特徴があります。

そのおかげで、以下のような 広大な電波空白地帯 でも通信が可能になります。

  • 太平洋横断ルート
  • 北極圏
  • アラスカ周辺
  • インド洋
  • 南米北部の一部空域

つまり VHFが届かない場所での生命線 というわけです。


VHFとの違い

パイロットからすると、次のような違いを強く実感します。

● VHF

  • 周波数帯:30〜300MHz
  • クリアで聞き取りやすい
  • 直線的にしか届かないため「見通し距離」の制約あり
  • 陸地の上空や管制が整備された空域で主に使用

● HF

  • 周波数帯:3〜30MHz
  • 電離層反射で長距離通信可能
  • ノイズが多い
  • 電波状況が時間帯や太陽活動で変わる
  • 海洋・極地方など遠洋ルートで必須

まとめると、
聞き取りやすさはVHF、到達距離はHF。
それぞれ用途がまったく違います。


パイロットから見たHF通信の「難しさ」

正直に言うと、HF通信は 慣れるまでかなり難しい 分野です。

● ノイズがものすごい

雷の近くでは「ガリガリガリ…ドーン!」と盛大なノイズが入ります。
他にも…

  • 他機の声が被りまくる
  • 雑音でコールサインが聞こえない
  • そもそも繋がらないこともある

VHFのクリアな音質に慣れていると、「本当にこれで運航していいの?」と最初は不安になります。

● 周波数選択が必要

時間帯や太陽活動で反射状況が変わるため、以下のように 使う周波数を切り替える 必要があります。

  • 昼:高めの周波数が届きやすい
  • 夜:低めの周波数が安定しやすい

遠洋ルートでは、事前に「Primary」「Secondary」の周波数が指定されますが、それでもつながらなければ別帯域に切り替える判断が必要です。

● 呼出し方法が特殊

HFには常にザーというノイズが流れるため、電話のような呼び出し方法があります。

それは「SELCAL(セルコール)」と呼ばれる、航空機固有の呼出しコードを使うことも多く、
これが鳴ると “ブーッ” と特徴的な音がコックピットに響きます。

音が鳴ったらHFのボリュームを上げて交信を開始します。
現場では「HFは常に聞いておく必要がない」という利点でもあります。


HF通信のメリット

パイロットから見たHFの強みは以下です。

● 世界中どこでも通信ができる

海洋上では管制との連絡手段が限られるため、HFは「最後の砦」です。
緊急時でも、HF経由で迅速に情報を共有できます。

● 電気的にシンプルで故障しにくい

短波ラジオの延長線にある通信方式なので、構造が比較的シンプルです。
衛星通信が故障しても、HFが助けてくれるケースは意外と多いです。

● データリンク普及後も必要

CPDLC(データリンク)でクリアランスが送れる時代になりましたが、
「完全にHFを廃止する」段階にはまだ達していません。

気象状況や太陽活動の影響を受けにくいバックアップとして、HFは依然として重要です。


実際のHF交信の流れ

パイロットの実務感覚としては、以下のようなステップで運用します。

  1. 指定されたPrimary周波数をセット
  2. 接続状況を確認(ノイズ・受信レベルなど)
  3. 必要に応じて呼び出し
  4. 聞こえにくければSecondaryへ変更
  5. SELCALを設定して待機
  6. 呼ばれたら応答して必要事項を送る(位置通報など)

位置通報はCPDLCで送れることが増えましたが、
HFで要求される地域もまだ残っています。


現場で感じるHF通信のリアル

  • 「たまに全くつながらない」
  • 「ノイズで何回も聞き返す」
  • 「周波数変更を何度も指示される」
  • 「天候が悪いと急に聞こえなくなる」
  • 「一度つながると意外に安定する」

特に太平洋では、HFの性能がそのまま業務のスムーズさに直結します。

ベテランの機長ほどHFを使いこなすのがうまく、
ノイズの中でもコールサインを聞き取る“耳の良さ”は経験値の賜物です。


まとめ

HF通信は、はっきり言ってVHFや衛星通信に比べると「アナログで使いづらい」通信です。
しかし国際線の運航では、いまも なくてはならない存在

  • 太平洋
  • 極地方
  • 海洋上の広大な空域

これらの地域を安全に飛び続けるためには、HF通信の理解と技術が欠かせません。

パイロット目線で言えば、
「HFが使いこなせると国際線の運航が一気に楽になる」
というのが正直なところです。

これから航空を目指す人や、無線に興味のある方の参考になれば嬉しいです。

他にも航空関係の記事を投稿していますので、気になるものがあれば見ていってくださいね。

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