航空燃料の種類を徹底解説|Jet A-1・Avgas・SAFの違いとメリット・デメリット

航空

飛行機は一体、どのような燃料を使って飛んでいるのでしょうか?

「飛行機の燃料=ジェット燃料」というイメージを持っている方も多いと思います。

もちろん、現在の旅客機の多くはジェット燃料を使用しています。しかし、すべての航空機が同じ燃料を使っているわけではありません。

例えば、小型のプロペラ機や訓練機の一部では**航空ガソリン(Avgas)**が使用されています。

さらに近年では、航空業界の脱炭素化に向けて**SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)**の利用も進んでいます。

そこで今回は、航空燃料の種類について、

  • どんな燃料があるのか
  • どの航空機で使われるのか
  • それぞれのメリット・デメリット
  • ジェット燃料と航空ガソリンの違い
  • SAFとは何なのか

を航空ファンにも分かりやすく解説していきます。


航空燃料には大きく2種類ある

まず、航空燃料を大きく分けると、

① ジェットエンジン用燃料
② レシプロエンジン用燃料

の2種類があります。

ジェットエンジンには基本的にケロシン系の燃料が使われます。

一方、レシプロエンジンを搭載した小型機などでは、一般的に**航空ガソリン(Avgas)**が使われます。

つまり、「飛行機だから全部同じ燃料」というわけではありません。

① Jet A-1(ジェットA-1)

世界で広く使用されているジェット燃料

現在の民間航空で非常に広く使用されているのがJet A-1です。

Jet A-1は、いわゆる「ジェット燃料」と聞いて多くの人がイメージする燃料の一つです。

主に、

  • ボーイング737
  • ボーイング777
  • ボーイング787
  • エアバスA320
  • エアバスA350

などの旅客機で使用されています。

航空会社が運航する大型旅客機だけでなく、貨物機やビジネスジェットなど、さまざまなタービンエンジン搭載機で使用されています。


Jet A-1のメリット

① 世界中で入手しやすい

Jet A-1は国際的に広く使用されているため、海外の空港でも補給しやすいという大きなメリットがあります。

国際線を運航する航空会社にとって、これは非常に重要です。

どこへ行っても燃料を補給できる環境が整っていることで、運航の柔軟性が高まります。

② 低温に比較的強い

航空機は高度数万フィートを飛行します。

上空では外気温が非常に低くなるため、燃料が凍結しないことは非常に重要です。

Jet A-1は低温環境での使用を考慮した規格になっており、長距離国際線などでも使用されています。

③ ジェットエンジンとの相性が良い

ジェットエンジンは大量の空気を取り込み、燃料を燃焼させて推力を生み出します。

Jet A-1は、このようなガスタービンエンジンで使用することを前提とした燃料です。


Jet A-1のデメリット

一方で、石油由来の燃料であるため、燃焼によってCO₂を排出します。

航空業界では、このCO₂排出量をどのように削減していくかが大きな課題になっています。

そこで注目されているのが、後に紹介するSAFです。


② Jet A

Jet Aもジェットエンジン用の燃料です。

Jet A-1と非常によく似ていますが、規格が異なります。

特に北米ではJet Aが広く使用されています。

つまり、

Jet A-1=国際的に広く使用
Jet A=主に北米で使用

というイメージを持っておくと分かりやすいでしょう。


Jet AとJet A-1の違い

大きな違いの一つが凝固点です。

Jet A-1はJet Aよりも低い温度まで使用できるよう規格が設定されています。

そのため、国際線などで長時間高高度を飛行する航空機にとっては、低温特性が重要になります。

ただし、両者は非常に近い性質を持つ燃料であり、同じジェットエンジン用燃料として利用されています。


③ Jet B

少し特殊なジェット燃料としてJet Bがあります。

Jet Bは、ケロシンとガソリンの中間的な性質を持つ燃料です。

特に低温性能に優れていることが特徴です。

そのため、

  • 極寒地域
  • 寒冷地

などで使用されることがあります。


Jet Bのメリット

最大のメリットは、非常に優れた低温特性です。

極端に気温が低い地域では、燃料の低温特性が重要になるため、Jet Bが適する場合があります。


Jet Bのデメリット

一方で、揮発性が高く、Jet AやJet A-1と比較して取り扱いに注意が必要です。

そのため、現在の民間航空ではJet A-1などが主流となっています。


④ Avgas(航空ガソリン)

ここからはジェット燃料とは全く異なる燃料です。

**Avgas(Aviation Gasoline)**は、レシプロエンジンを搭載した航空機などで使用される航空ガソリンです。

例えば、

  • 小型単発機
  • 小型双発機
  • 一部の訓練機
  • クラシック航空機

などで使用されています。

代表的なものとしてAvgas 100LLがあります。


Avgas 100LLとは?

100LLの「LL」は、

Low Lead(低鉛)

を意味します。

「低鉛」といっても、完全に無鉛という意味ではありません。

ピストンエンジンのノッキングを防止するため、航空ガソリンには鉛化合物が使用されてきました。

そのため、Avgasは環境面で課題を抱えています。


Avgasのメリット

高性能なレシプロエンジンに対応

航空用レシプロエンジンは高い出力を必要とするため、ノッキングを防ぎながら安定した燃焼を行う必要があります。

Avgasはそのような航空用ピストンエンジン向けに設計されています。


Avgasのデメリット

最大の課題の一つが鉛です。

鉛を含む燃料の使用は環境や健康への影響が問題となっており、現在は無鉛航空ガソリンへの移行が世界的に進められています。

つまり、

「航空ガソリン=昔ながらの燃料」

というわけではなく、現在も技術開発が進められている分野なのです。


⑤ SAF(持続可能な航空燃料)

そして現在、航空業界で最も注目されている燃料の一つがSAFです。

SAFとは、

Sustainable Aviation Fuel

の略です。

日本語では、

持続可能な航空燃料

と呼ばれています。


SAFは「新しい種類のジェット燃料」なの?

ここは少し注意が必要です。

SAFは必ずしも「Jet A-1とは全く別の燃料」というわけではありません。

現在実用化されているSAFの多くは、既存の航空機や燃料供給設備で利用できるように、従来のジェット燃料と混合して使用することを前提としています。

そのため、

既存の航空機を大きく変更せずに導入できる

という点がSAFの大きなメリットです。


SAFの原料

SAFにはさまざまな製造方法があります。

例えば、

  • 廃食油
  • 動植物由来の油脂
  • 廃棄物
  • バイオマス
  • 将来的には合成燃料

などが原料として利用されています。

製造方法によって環境負荷やコストなどが異なるため、「SAFならすべて同じ」というわけではありません。


SAFのメリット

CO₂排出量削減が期待できる

SAFの大きな目的は、航空機のライフサイクル全体で見た温室効果ガス排出量を削減することです。

航空機そのものを電動化することが難しい大型旅客機では、既存のジェットエンジンを活用できるSAFは重要な選択肢となっています。


既存の航空機を利用できる

SAFの大きな特徴はここです。

「新しい燃料だから新しい飛行機を作らなければならない」

というものではありません。

規格に適合したSAFは、従来のジェット燃料と混合して既存の航空機で使用できます。

そのため、航空会社にとって導入しやすいというメリットがあります。


SAFのデメリット

一方で、SAFには課題もあります。

① 価格が高い

従来の化石燃料由来のジェット燃料と比較すると、SAFは製造コストが高いことが大きな課題です。

航空会社が大量に使用するためには、安定した生産量と供給体制が必要になります。


② 生産量がまだ十分ではない

世界中の航空機が必要とする燃料をすべてSAFに置き換えるには、非常に大量の燃料が必要です。

そのため、

「SAFを使えば明日から航空業界の燃料が全部SAFになる」

というわけではありません。

今後は製造技術の向上や生産設備の拡大が重要になります。


航空燃料の種類を比較してみよう

燃料主な用途メリットデメリット
Jet A-1旅客機・貨物機など世界的に普及、低温特性化石燃料由来
Jet A主に北米の旅客機など安定供給、実績が豊富低温特性はJet A-1より低い
Jet B寒冷地など非常に優れた低温特性揮発性が高い
Avgas小型レシプロ機など航空用ピストンエンジンに適する鉛など環境面の課題
SAF主にジェット機CO₂排出削減が期待される高コスト・供給量

なぜ旅客機はガソリンではなくジェット燃料なの?

ここも航空ファンなら気になるところではないでしょうか。

旅客機に使用されるジェットエンジンは、基本的にガソリンではなくケロシン系のジェット燃料を使用します。

ジェット燃料はガソリンと比較して揮発性が低く、航空機の運航環境に適した性質を持っています。

また、ジェットエンジンはレシプロエンジンとは燃焼方式そのものが異なります。

そのため、

旅客機=ジェット燃料
小型レシプロ機=Avgas

という大まかな違いを覚えておくと分かりやすいでしょう。


では、ヘリコプターは何を使う?

ヘリコプターもエンジンの種類によって異なります。

大型・中型ヘリコプターの多くはタービンエンジンを使用しているため、基本的にジェット燃料を使用します。

一方、小型のピストンエンジン搭載ヘリコプターでは航空ガソリンを使用する場合があります。

つまり、燃料の種類は「飛行機かヘリコプターか」ではなく、搭載しているエンジンの種類によって決まると考えると分かりやすいでしょう。


まとめ

今回は航空燃料の種類について解説しました。

航空燃料と一言で言っても、

  • Jet A-1
  • Jet A
  • Jet B
  • Avgas
  • SAF

など、さまざまな種類があります。

特に覚えておきたいのは、

大型旅客機 → Jet A-1などのジェット燃料

小型レシプロ機 → Avgasなどの航空ガソリン

という違いです。

そして現在、航空業界で大きな注目を集めているのが**SAF(持続可能な航空燃料)**です。

航空機は自動車と比べて電動化が難しいため、既存の航空機やエンジンを活用しながら環境負荷を低減できるSAFは、航空業界の脱炭素化において重要な選択肢の一つとなっています。

普段飛行機に乗るときはあまり意識しない「燃料」ですが、実は航空機の性能や航続距離、運航コスト、さらには航空業界の環境問題まで関係している、とても奥深い分野です。

空港で飛行機を見かけた際には、

「この飛行機はどんな燃料を使って飛んでいるんだろう?」

と考えてみるのも、航空を楽しむ一つの方法かもしれません。

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