「飛行機が緊急降下しました」というニュースを聞いたことはありませんか?
普段飛行機に乗っていると、こうしたニュースを聞いて「一体機内では何が起きているの?」と不安になる方も多いと思います。
結論から言うと、飛行機が緊急降下を行う最も多い理由は機内の気圧を保つ「与圧システム」のトラブルです。
この記事では、
- 緊急降下とは何か
- なぜ飛行機は緊急降下を行うのか
- 機内では実際に何が起きているのか
- パイロットの操作と乗客が取るべき行動
について、航空の仕組みを交えながらわかりやすく解説します。
緊急降下を経験する可能性は非常に低いですが、万が一の時に命を守る知識として知っておくと安心です。
緊急降下とは?
緊急降下とは、飛行機が巡航高度から短時間で安全な高度まで急速に降下する操作のことを指します。
飛行機の巡航高度は通常、約11000m(36000ft)前後です。
この高度では地上と比べて気圧が非常に低く、人間がそのまま呼吸することはできません。そのため、飛行機には機内の気圧を地上に近い状態に保つ仕組みが備わっています。
このシステムに問題が発生した場合、パイロットはすぐに呼吸が可能な高度まで降下する必要があります。
この操作が「緊急降下」です。
機内では何が起きているのか
では、実際に機内ではどのようなことが起きているのでしょうか。
飛行機の客室は、風船のように空気を閉じ込めて気圧を保っている状態になっています。
もし与圧システムに異常が発生すると、機内の空気が徐々に外へ逃げてしまいます。
イメージとしては、風船に小さな穴が開いて空気が抜けていく状態に近いです。
気圧が低下すると、機内の酸素量も減少していきます。
そのため、機内では自動的に酸素マスクが落ちてくる仕組みになっています。
飛行機の与圧システムとは?
与圧システムとは、飛行機の客室の気圧を調整する重要なシステムです。
航空機は高度10000m以上を飛行しますが、その高さでは地上の約20%程度の気圧しかありません。
このような環境では、人間は十分な酸素を取り込むことができません。
そのため飛行機では、エンジンから取り込んだ空気を利用して機内を加圧し、標高2000m前後の環境に近い気圧に保っています。
このシステムがあることで、乗客は高高度でも安全に呼吸することができるのです。
高高度ではなぜ危険なのか
よくスポーツ選手が高地トレーニングを行うという話を聞いたことがあると思います。
標高が高い場所では気圧が低くなり、空気中の酸素量が少なくなります。そのため体はより多くの酸素を取り込もうとして心肺機能が鍛えられます。
ただし、飛行機の巡航高度はその比ではありません。
高度約11000mでは、人間が酸素マスクなしで活動できる時間は非常に短くなります。
航空医学ではこの時間を
Time of Useful Consciousness
と呼びます。
この高度では、30〜60秒ほどで正常な判断ができなくなる可能性があります。
そのため、与圧トラブルが発生した場合には一刻も早く高度を下げる必要があるのです。

パイロットが行う緊急降下の手順
与圧トラブルが発生すると、パイロットはすぐに緊急降下の手順を開始します。
主な流れは次の通りです。
① パイロットが酸素マスクを装着
まず最優先で、パイロット自身が酸素マスクを装着します。
これは操縦者が失神してしまうことを防ぐためです。
② オートパイロットで降下開始
次にオートパイロットを使って降下を開始します。
自動操縦を使用することで、パイロットはその後のチェックリストや無線連絡などを迅速に行うことができます。
同時にシートベルトサインも点灯します。
③ 最大効率で降下
その後、パイロットは
- スピードブレーキの使用
- 機体のバンク(旋回)
- 速度の増加
などを行い、できるだけ早く安全高度まで降下します。
機種によって差はありますが、6000〜8000fpm程度の降下率になることもあります。
安全高度は約10000ft
緊急降下では、まず10000ft(約3000m)付近まで降下します。
この高度であれば、与圧がなくても人間が呼吸できる環境に近いためです。
その後、状況を確認しながら空港へ向かうか、安全な高度で飛行を継続するかが判断されます。
乗客が取るべき行動
もし機内で酸素マスクが降りてきた場合、乗客が取るべき行動はとてもシンプルです。
① すぐに自分の酸素マスクを装着する
最優先は自分の酸素マスクを着用することです。
子供と一緒に乗っている場合でも、必ず大人が先に装着してください。
大人が意識を失ってしまうと、子供を助けることができなくなるためです。
② シートベルトを締めて着席する
その後は座席に座り、シートベルトをしっかり締めましょう。
緊急降下では通常よりも急な降下になるため、安全確保が重要です。
映画のようにドアが開くことはある?
映画では飛行中にドアが開いて乗客が外へ吸い出されるシーンがあります。
しかし実際には、飛行中の機体は機内の方が気圧が高い状態になっています。
そのため、もしドアに隙間ができれば空気は外へ逃げようとするため、あのような現象が起こる可能性はあります。
ただし、現実の航空機では安全装置が多く備わっているため、飛行中にドアが開くことは基本的にありません。
まとめ
飛行機の緊急降下は、主に与圧システムのトラブルによって発生します。
高度10000m以上では酸素が非常に少ないため、パイロットは安全な高度まで迅速に降下します。
もし機内で酸素マスクが降りてきた場合は、次の2つを必ず覚えておきましょう。
- すぐに自分の酸素マスクを着用する
- シートベルトを締めて座席に座る
緊急降下を経験する可能性は非常に低いですが、正しい知識を知っておくことで落ち着いて行動することができます。
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最後まで読んでいただきありがとうございました。

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